講座研究テーマ

クロモバクテリウムのⅢ型分泌機構エフェクターの機能解析

クロモバクテリウム(Chromobacterium violaceum)は亜熱帯地方の環境中に広く存在するグラム陰性細菌です。本菌はヒトおよび動物に感染する病原細菌であり、ひとたび宿主への感染が成立すると重篤な感染症を引き起こすことが知られています。
本菌による感染症は肺、肝臓や脾臓などにおける化膿性結節形成が特徴的であり、敗血症にまで進行すると多臓器不全など重篤な感染症を引き起こします。

C.violaceumの病原性発現に関わるビルレンス因子は全く不明でしたが、我々はマウスを用いた感染モデル実験より、本菌が保持するIII型分泌機構が病原性発現に必須であることを初めて明らかにしました。
本菌は、二つのIII型分泌装置(Cpi-1/-1aおよび-2と呼ばれる)を保持すると推測されていますが、そのうちの一つ(Cpi-1/-1a)が病原性発現に必須であることをわかりました。さらに、これまで未知であったC.violaceumのエフェクターを網羅的に同定し、初めて明らかにしました。それらの一つであるエフェクターは、哺乳細胞の低分子量GTPase(Rac1とCdc42)の活性化を促すグアニンヌクレオチド交換因子(guanine nucleotide exchange factor, GEF)として機能することを明らかにしました。

CopE(Chromobacterium outer protein E)と命名したこのエフェクターは宿主のアクチン骨格の再構成を誘導することにより、本菌の宿主細胞への侵入を可能にします。また、CopEが属する細菌由来のグアニンヌクレオチド交換因子ファミリー(SopEファミリー)のエフェクターとしては初めて、in vivoにおける病原性に関わることを明らかにしています。

Hela細胞に感染したクロモバクテイルムIII型分泌装置の電子顕微鏡写真

Hela細胞に感染したクロモバクテイルムIII型分泌装置の電子顕微鏡写真

クロモバクテリウムはIII型分泌装置からエフェクターを宿主細胞に注入し、エンドサイトーシスを誘導することで細胞内に侵入する。

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