講座研究テーマ

サルモネラの自然免疫回避エフェクターの機能解析

サルモネラには2500を越える血清型が知られていますが、ヒトに対し全身感染し、重篤なチフス・パラチフスを起こすチフス性サルモネラ血清型(TyphiおよびParatyphi A、typhoidal S.enterica)と局所感染により胃腸炎を引き起こす非チフス性サルモネラ血清型(non-typhoidal S.enterica: NTS)に大別されます。

NTSはわが国の食中毒の発生件数、患者数ともに上位を占めるサルモネラ腸炎の原因菌です。また、免疫不全患者や小児、高齢者ではNTSの全身感染による死亡例も少ないながら報告されています。このことは、NTSが赤痢菌やコレラ菌、腸管出血生大腸菌と同様に腸管病原細菌でありながら、全身感染を引き起こすという本菌独特の病原性を示していると考えられます。
サルモネラ腸炎には、独立した2つのIII型分泌機構(T3SS-1および-2)から宿主細胞へ直接注入されるエフェクター(III型エフェクター)が重要な役割を果たすこと、またサルモネラのIII型エフェクターには腸炎発症に関わるものとは別に腸炎(自然免疫)を回避する作用をもつものが存在し、この作用により感染局所において自然免疫を回避したNTSが全身感染を可能にしていることが示唆されます。

現在我々の研究室では、サルモネラの機能未知のタンパク質から宿主の自然免疫回避に関わるエフェクターを同定し、その機能を明らかにすることを試みています。

サルモネラのIII型エフェクターによる自然免疫系の回避(Haneda et al. 2012)

サルモネラのIII型エフェクターによる自然免疫系の回避(Haneda et al. 2012)

サルモネラはSopB、SopE、SopE2などのIII型エフェクタ?の機能によりMAPKまたはNF-κB経路を活性化することで、腸管において炎症反応を惹起し腸炎を引き起こす。
一方、サルモネラのIII型エフェクターにはこれらの反応を回避する機能を有するもの(AvrA、SptP、SpvC、SspH1など)が存在し、宿主の炎症反応を回避し、菌の全身への拡散を助けることが示唆されている。

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