臨床薬学研究部門

研究内容

臨床薬学研究部門では、様々な病気の発症機構や有毒物質の毒性発現における活性酸素の役割を解明し、基礎研究での成果を新たな薬物治療法の開発などへ発展させる研究を目指しています。

【研究テーマ】

  • ・様々な疾患の発症における酸化脂質依存性細胞死の関与の解析および治療法やバイオマーカーの開発
  • ・脂質酸化に関わる新たな酸化酵素の同定と機能の解析


 私たちにとって酸素は、生存する上で最も大切な生物エネルギーであるATPを生産するために必要不可欠な物質です。しかし、その過程で一部は反応性の高い中間代謝物となります。これらの中間代謝物は極めて反応性に富んでいるため「活性化された酸素」の総称として 活性酸素種(Reactive Oxygen Species : ROS)と呼ばれています。ROSとは狭義の意味ではスーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカルおよび一重項酸素を指し、広義には一酸化窒素や、ペルオキシラジカル 、次亜塩素酸などが含まれます。これらのROSは、 紫外線による酸素分子の分解反応によっても生じるほか、リポキシゲナーゼやNADPHオキシダーゼなどの酸化酵素などにより酵素的に生成されます。生成されたROSは、生体成分であるタンパク質や脂質、核酸を酸化修飾しその機能を不活化することが知られています。したがってROSや酸化酵素のような 酸化活性を持つ物質を、まとめて生体における酸化力と考えることができます。

 一方で私たちは、この酸化力に対抗するために様々な抗酸化物質を持つことで抗酸化力を高めています。代表的なものがカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼなど、ROSを消去できる抗酸化酵素です。またセレノプロテインPやグルタチオンなど、ROSと直接反応して消去するタンパク質・ペプチド、 トランスフェリンのように金属と結合することでフェントン反応によるROSの生成を抑制する分子も抗酸化タンパク質です。さらに食事から摂取されるビタミンCやビタミンEなどの抗酸化活性を持つビタミンや、カロテノイド、ポリフェノールなどの成分も生体における重要な抗酸化物質です。

 通常、体内では酸化力と抗酸化力のバランスがうまくとられていますが、何らかの要因でこのバランスが壊れてどちらかに傾くと生体内に異常が生じます。特に酸化力が抗酸化力を上まわった状況を「酸化ストレス」と言います。強い酸化ストレスが持続的に続くと、酸化修飾された異常タンパク質や脂質、 核酸を除去できなくなって、細胞機能の障害により細胞死が引き起こされます。さらに大規模な細胞死の誘導は構成する組織の障害を引き起こし最終的に病気へと繋がります。酸化ストレスは、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、動脈硬化症や脳梗塞、心筋梗塞などの循環器病、腎疾患、糖尿病など 多くの疾患の要因になってことが明らかになってきていますが、発症における作用の詳細についてはまだまだ不明な部分が多く、個々の疾患における酸化ストレスの作用機序の解明が期待されています。

研究図

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