紫外線 A 波(UVA)とは?

紫外線が皮膚に及ぼす影響

皮膚への障害性は、“UVA < UVB” ?  UVB に比べて、UVA は物質への障害性が低いと思われていましたが、UVA に晒された皮膚でも生理活性物質や活性酸素種(ROS)が産生され、炎症反応や DNA 損傷を引き起こすことが知られています。

1. UVA 照射による細胞応答への TRP チャネルの関与

細胞膜のタンパク質(受容体・イオンチャネル)が UVA に応答する?  TRP チャネルは、温度変化、機械的刺激、浸透圧変化、痛み、pH 変化、酸化ストレスなど様々な刺激によって活性化されるカチオンチャネルで、細胞のセンサータンパク質として機能しています。
 UV 曝露は、G タンパク質共役型受容体を介して TRP チャネルを活性化することが報告されていますので、TRP チャネルの活性化が、皮膚障害の一因となる炎症性物質の産生に、どのように関わるのか検討しています。

2. UVA 照射による細胞応答への ATP シグナリングの関与

シグナル分子としての ATP  ATP は、生体のエネルギー供与体として数多くのエネルギー代謝に関わっています。一方で、刺激を受けた細胞から細胞外へ放出されて細胞膜上にある ATP 受容体( P2 受容体)に作用し、組織修復や病態発症などの様々な生理作用を起こすことも知られています。ATP などのヌクレオチドと P2 受容体が関わる情報伝達システムを ATP シグナリングと呼びます。
 この ATP シグナリング系が UVA 曝露により誘発される皮膚障害に関与するのかどうかについては、明らかではありませんでした。

A) ATP 及びその受容体を標的とした新規光老化発症機構の探索

皮膚の老化に ATP シグナリングが関わる?  紫外線(特に UVA)を長期間浴び続けることによって進行する皮膚の老化を、光老化と呼びます。
 この光老化の発症・進行メカニズムは複雑です。私たちは光老化を抑制する因子を見つけるために、新たな光老化の発症機序の探索を行っています。その結果、UVA 照射により細胞膜上の幾つかのチャネルや受容体を介して ATP が細胞外へ放出され、P2 受容体を活性化して炎症性サイトカイン(IL-6)の産生を誘導することが分かりました。

B) UVA 照射による DNA 損傷機構への ATP シグナリングの関与

UVA による DNA の傷害に ATP が関わる?  皮膚には角化細胞、繊維芽細胞、肥満細胞、ランゲルハンス細胞など様々な細胞が存在します。UVA は UVB よりも皮膚の深い部分まで到達しますので、毛細血管中の血球にまで影響を及ぼす可能性があります。
 UVA は DNA に吸収されにくいため、直接 DNA を損傷することは殆どありませんが、ROS 産生などを介して間接的に傷害します。皮膚に存在する細胞の UVA に対する感受性は細胞の種類によって異なると考えられますので、私たちは皮膚中にいる様々な細胞種のモデル細胞を用いて、UVA による DNA 損傷と引き続き起こる修復や細胞死等の細胞応答への ATP シグナリングの関与について検討しています。