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ごあいさつ

日本社会薬学会 第28年会 趣意書(ごあいさつ)

北里大学 薬学部
社会薬学部門 教授  鈴木 順子

 医療法改正、これに前後する薬事法の改正により、我が国の医療提供体制は根幹からの再編を迫られております。とりわけ、「薬」の分野では、薬学教育6年制の折り返し点を迎え、どのような人材を送りだすのかを、こうした医療体制の変化を牽き映しつつ、総力をあげて現実化すべき時期を迎えております。

 これは、言い換えれば、今進行している医療提供体制の再編に対して、薬剤師・薬学、そして薬業全体がどのように参画してゆくのか、医療責務をどの局面でどのように担い得るのか、更にはそれが豊かな医療の構築にどのように益するものであるかを、確かなオピニオンの潮流として打ち出し、明示することに他ならないと考えられます。もちろん、多くの薬学関連分野で、検討されている課題ではあろうと思いますが、これまで、長きに渡って、薬・薬学の社会貢献を模索し、多くの意見や工夫の受け皿として活動してきた社会薬学会こそは、いずれにもまして、このような潮流形成の母体としての役割を負う必要があります。

 今、我々の眼前には、「地域」というフィールドと、「法」による大まかな指針が提示されています。

 今回の日本社会薬学会第28年会では、医療フィールドとしての地域を地域医療提供体制・生活フィールドとしての地域・アカデミアの3次元で捉え、この立体における「薬」の循環のダイナミズムと「薬」に関わる者たちの役割・責務を改めて検討していきたいと考えております。薬の循環のダイナミズム:医薬品の創出・普及・適正使用・薬物治療の成功等からは、さらに多くのキーワードが導かれ、そのいずれかのうちに今、現実的に薬剤師・薬学、そして薬業が直面し、苦闘する多くのテーゼが含まれるものと考えられます。

 本年会では、薬学以外の領域から多くの講師を招き、薬剤師・薬学に対する各方面の期待と、連携のありかたを考える機会とするとともに、会員各位には薬剤師の臨床の場で、あるいは薬学研究の場で、個別に直面し、検討されている課題をこの機会にご発表いただき、更なる検討を加えながら共有していくことで、「薬」の未来の発展と、豊かな地域医療体制の構築にむけた足がかりとしたい、と考えております。