研究背景

オピオイド系化合物の合成と医薬への適用

オピオイド受容体はモルヒネが結合して鎮痛作用や薬物依存性を発現することで有名な受容体である。現在、その受容体に3つのタイプ(μ、κ、δ)の存在が知られ、鎮痛作用は3つの受容体ともに関与し、依存性はモルヒネが選択的に結合するμ受容体が関与することが明らかになっている。 そこで依存性のない鎮痛薬を設計するにはμ以外の受容体、κ、δに選択的な作動薬を設計する必要がある。すでに KNT-127(δ受容体作動薬)1)、KNT-63(κ受容体作動薬)2)、SYK-146 (κ受容体作動薬) 3)、化合物1(δ受容体作動薬)4)、化合物2(δ受容体逆作動薬)5)等の創製に成功している。 適応としては鎮痛薬ばかりでなく抗うつ薬、抗不安薬、薬物依存症治療薬の可能性を検討する。 星薬科大学、東北薬科大学、国立がん研究センター研究所などとの共同研究を実施。

適応

メッセージーアドレス概念の適用

メッセージ・アドレス概念

アクセサリー部位の概念を用いる薬物設計

一般に、作動薬と拮抗薬の構造の違いは、下図にあるようなアクセサリー部位の有無に基づいている。作動薬は脂溶性の高いアクセサリー部位がなく、小さな構造をしている。一方、拮抗薬は作動薬にアクセサリー部位を付加した構造を有している。

アクセサリー部位

この概念を利用して、δ受容体拮抗薬(NTI誘導体)から設計されたδ受容体作動薬のTAN-67のアクセサリー部位の再検討を行い、高活性なδ受容体作動薬KNT-127を見出した。1)また、δ受容体作動薬3からアクセサリー部位を除去することでより高活性なδ受容体作動薬4を見出した。2)

化合物設計

DPRシリカ(SO3H修飾シリカゲル)を用いた反応の検討

固相担持試薬は反応における廃棄物の減少や環境に優しいプロセスに有効であるとされ、近年、広く用いられるようになってきた。実際、固相担持試薬は反応混合物から濾過により容易に除去できるばかりでなく、固相担持触媒の場合には再使用も可能である。我々は最近、表面をアルキルスルホン酸で修飾したシリカゲル(DPRシリカ)を用いたシリルエーテルの脱保護反応を見出した。1) 本脱保護法は粗生成物中にシリル基由来の残基が含まれず、カラム精製の必要のない簡便な方法である。DPRシリカを用いた脱シリルか反応は糖、ヌクレオシド、およびアルカロイド誘導体において適応可能である。2) 現在、他の保護基の脱保護反応、その他の反応への応用を検討中である。

dpr1
dpr2