研究内容

研究のミッション

薬物/内在性物質の吸収・分布・代謝・排泄(ADME)に影響する薬物トランスポーターを介した輸送機能を分子レベルの視点で明らかにすると共に、その輸送を変動させる要因を探索し、ヒト臨床薬物動態の個人間変動の定量的理解に繋げる。

最近取り組んでいる研究の例

葉酸トランスポーター(PCFT)の輸送に関する研究

葉酸は非常に重要なビタミンの一つであるが、水溶性が極めて高いにも関わらず、細胞内には効率よく取り込まれており、そのメカニズムとしてトランスポーターの役割が重要であることが分かっている。特に、葉酸の消化管吸収においては、PCFT (proton-coupled folate transporter)が主な役割を担っている。PCFTの輸送の基本特性を明らかにし、臨床におけるPCFTの輸送の個体間変動の要因を明らかにするために、基質の立体選択性、薬物・食品由来成分による相互作用、遺伝子変異による輸送の変動等にかかわる研究を展開している。

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有機アニオントランスポーターOATP2B1の輸送に関する研究

OATP(organic anion transporting polypeptide)2B1は、主にアニオン性の薬物を非常に広範に認識するトランスポーターであり、消化管にも発現が認められていることから、薬物の消化管吸収を促進する方向に寄与する可能性が示唆されている。そこで、OATP2B1を介した輸送の基本特性を明らかにするとともに、臨床におけるOATP2B1を介した輸送の個体間変動の要因を明らかにするために、薬物・食品由来成分による相互作用、遺伝子変異による輸送の変動等にかかわる研究を展開している。

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消化管上皮幹細胞の安定培養系の確立・分化細胞による消化管吸収/消化器毒性発現の種差・部位差に関する研究

これまで、ヒト消化管吸収の予測は、大腸がん由来不死化細胞Caco-2細胞の透過性や動物実験による吸収率の評価で行われてきたが、代謝酵素・トランスポーターの発現プロファイルの違いや種差により、ヒトでの消化管吸収を精緻に予測できる細胞系は存在しなかった。そこで本研究では、消化管幹細胞の3D安定培養系を起点として、適切に分化させたヒト及び動物吸収上皮細胞を用いることで、ヒトにおける消化管吸収の予測に繋げる研究を展開している。さらにこの細胞系は、採取した元の細胞の位置の遺伝子プロファイルを維持しており、これまでにin vitroでは評価不能であった消化管部位差も検討可能である。また、動物からもほぼ同一のプロトコルで同様の細胞系を樹立できることから、種差のin vitro試験による検討も可能であり、将来的には動物実験代替法としての本細胞系の有用性を示していきたいと考えている。

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現在進行中の共同研究・参画プロジェクト

★第一三共(株)

医薬品により誘発される消化管障害を包括的に予測可能な動物実験代替を目指したin vitro実験系・評価法の開発

★日本赤十字社近畿ブロック血液センター(献血血液の研究利用)

分子標的型の抗がん剤による急性の薬剤誘導性貧血のin vitro評価法の確立、原因探索、およびBCRP欠損Jra(-)型赤血球における薬物の分布・副作用との連関に関する研究

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★ウシオ電機

新規MPSデバイスによる細胞機能の高度化に関する研究

★大鵬薬品工業

ヒト消化管由来細胞HIECの薬物動態学的性状解析に関する研究

★長崎大学(向井英史先生: AMED-DDS)

新規DDSモダリティのPETを用いた体内動態解析手法の開発に関する研究

★LINC(ライフインテリジェンスコンソーシアム)

創薬の様々な局面にAI、機械学習の技術を導入することで、予見性を飛躍的に高める技術開発(前田は、WG07「ADMET, translational research」のワーキンググループ長をつとめている)

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