◇抗菌薬のTDMと投与設計
配属学生は、北里大学北里研究所病院の臨床分離株のMIC分布調査と抗MRSA薬の母集団薬物動態解析に関する研究を行ってい
ます。バンコマイシンに関する研究成果は、平成22年度の日本TDM学会学術大会において報告し
ました。
また、博士課程の配属生は、フルオロキノロン系抗菌薬の PK-PD
に関する研究を実施するため、複数のフルオロキノロン系抗菌薬の血清中濃度を同一条件で測定できる方法を開発しました。その研究成果は、平成22年度6月発行のJournal
of Chromatography B に掲載 されました。今後この系統の薬物の PK-PD
についても研究することを予定しています。
なお、最近の抗菌薬のTDMの総説として、篠崎公一:アミノ配糖体(アミノグリコシド)系抗生物質.日本臨床 68
増刊号1,468〜471 (平成22年1月)
があります。
◇TDM
情報システム
1)
TDM
データベースの開発
教育・研修をより効果的に実施するために北里大学北里研究所病院の薬剤部と共同でTDMデータベース開発し、運用してい
ます。このデータベースは、新課程学部4年次生に対するTDM事前実習の教材
の作成や、薬剤部レジデント(北里研究所病院)および大学院生の教育に有用で、配属学生が行う母集団薬物動態解析に役だっています。
2)
TDM
用ソフトウェアの開発と改良
TDM 用のソフトウェア
OptjpWin の開発と改良を行い、事前実習、病院実務および実務実習に応用しています。平成22年度、配属学生が新たなTDM用ソフトウェア の開発に着手し、平成22年度
中の学会報告をめざして研究中です。
◇循環器用薬の投与設計
当研究室では、北里研究所病院において十数年にわたり、循環器用薬であるジゴキシン、フレカイニド、ピルメノール、シベンゾリン、ピルジカイニドなどの TDM
を実施し、そのデータについて母集団薬物動態解析を行い、得られた母集団薬物動態モデルを
TDM 用ソフトウェアOptjpWin に組み込み、投与設計に応用しています。OptjpWin
は、現在利用できる薬物投与設計プログラムの中で、解析可能な循環器用薬の種類が最も多いことが特徴のひとつとなっています。
◇テオフィリンの投与設計
当研究室は、北里研究所病院において呼吸器疾患治療に用いられているテオフィリン製剤の TDM を実施してき
ました。そして、テオフィリンの TDM データについて母集団解析を行い、加齢、心不全、飲酒の影響を考慮したモデルを構築し
、その研究成果が平成21年4月発行の日本 TDM 研究に原著として掲載され
ました。
さらに、高齢患者が多い呼吸器疾患患者のテオフィリンの投与指針について、この母集団モデルと患者共変量分布・頻度を用いてモンテカルロ−シミュレーションにより検討し
ました。その研究成果は、第26回日本TDM学会学術大会(新潟,平成21年6月13日)で報告し、平成22年度の日本TDM学会誌に
受理され、原著として掲載予定となっています。
◇免疫抑制薬のTDM
●小児におけるタクロリムスの母集団解析
自治医科大学病院薬剤部,同大学移植外科学研究室および同大学臨床薬理学研究室との共同研究により,生体肝移植施行小児患者の拒絶反応防止を目的としたタクロリムスの投与において
、本薬剤の母集団解析を行いました。その研究成果は、第24回日本TDM学会・学術大会(金沢、平成19年7月29日)および第28回日本臨床薬理学会(宇都宮、平成19年11月29日)において報告し
ました。
◇ミダゾラムの母集団解析
当研究室と国立成育医療センター周産期部新生児科医師を代表者とする小児科医師の研究グループとの共同研究。早産新生児の集中治療領域では鎮静が必要となることが多いが、鎮静薬ミダゾラムの新生児へ効能・効果および用法・用量は未承認であり、有効性と安全性に関する指針がない
のが実情でした。このため、早産新生児におけるミダゾラムの薬物動態を解析しました。その研究成果は、第26回日本TDM学会・学術大会(新潟、平成21年6月14日)において報告し
ました。