3.動物モデル(動脈硬化発症、腫瘍など)での薬効評価研究

 我々が発見した化合物の中で有望あるいは重要と予想される化合物(特に脂質代謝阻害剤と抗感染症剤)については、疾患モデルマウス等を用いた有効性の解析研究も進めております。動物実験については、特に研究室外の研究者と共同で進めています。現在までに、脂質代謝阻害剤として発見したボーベリオライドやピリピロペンについて動脈硬化モデルマウスを用いてその効果を調べました。

 ボーベリオライド類は、動脈硬化初期病巣に観察されるマクロファージ泡沫化という現象をマイクロプレート上に再現した評価系より発見された化合物です(マクロファージ泡沫化については前部に詳述)。作用メカニズムを解析した結果、本化合物はマクロファージ内の ACAT を阻害することを明らかにしました。マクロファージの泡沫化現象やACATなどは、動脈硬化症の標的として製薬企業からも注目されております。そこで、動脈硬化を発症するモデルマウス(アポタンパク質E(低密度リポタンパク質等のいわゆる悪玉コレステロールに局在するタンパク質)、または低密度リポタンパク質受容体を欠損させたマウス)を用いて2ヶ月間連続経口投与した結果、マウスに、全く毒性を示すことなく、動脈硬化の進展を抑制しました。つまり、我々が発見した化合物が動物実験で動脈硬化症に対して抑制効果を示したのです。世界中の科学者に読まれているChemical & Engineering News という雑誌でトピックスとして取り上げられるなど、世界的に注目を集めております(下図)。


 このように、自分達で発見した化合物に関して、自分達で動物レベルの評価を行っております。今後も、有用な化合物に関しては、疾患モデルマウス等を用いた動物レベルでの解析を行いたいと考えております。