4.カイコを用いた抗感染症剤の開拓
これまで医療発展のために必要なものとしてマウス、ラット、サルなど様々な哺乳動物が止むを得ず前臨床試験に用いられてきました。しかし、近年、世界各国で倫理上の問題から哺乳動物を用いた実験への規制が厳しくなり、これに代わるモデル動物が必要となっています。そこで本テーマでは哺乳動物の代替動物として昆虫のカイコを利用し、天然資源からの創薬を試みています。
カイコを用いる利点として、まず @ 倫理的問題の回避、A 経費軽減、B 飼育の簡便さ、C 多数のサンプル評価が可能、D 系統の確立、E 遺伝子操作の確立などが挙げられると思います。また、カイコは糖代謝、脂質代謝、免疫応答、薬物動態などが哺乳動物に近いことが既に明らかになっていることから、哺乳動物の代替動物として応用が考えられます。そこで私たちはこのカイコを使って様々なヒト疾患モデルを作成し、スクリーニングの初期段階に簡易的なin vivo実験として取り入れ、微生物の培養液を評価しています。これまでの実験結果から、従来の
in vitro 実験と比較して、実際に医薬品の候補として有効なサンプルであるか否かを早期に判断することが可能となり、さらに生体内で効果を示すものを優先的にセレクションできることから、医薬品開発において一歩も二歩もリードできるものと考えています。
このような中、感染症対策のみならずカイコ利用した評価系をさらに構築し、現在、@メタボリック症候群 (コレステロール吸収、糖尿病、痛風etc)、A 各種代謝機能 (免疫、脂質代謝etc)、B 殺虫・駆虫薬、C 化粧品 (メラニン生合成阻害剤) などをターゲットとした医薬品開発にも取り組んでいます。