3.細胞壁合成阻害剤の開拓

  細菌は細胞質膜の外側に細胞壁をもっています。ペプチドグリカンを代表とする細胞壁構造は人などの動物の細胞にはないため、細胞壁合成阻害剤は選択毒性に優れているという特徴があります。下の図に示したように、β-ラクタム薬(ペニシリンやセファロスポリン)、バンコマイシン、ホスホマイシンなどが医薬品として用いられていますが、そのターゲット部位は生合成過程のほんの一部にすぎず、まだ多くの薬剤標的が存在しています。このように我々は、細胞壁生合成に関係する代謝経路のうち、既存の医薬品の標的分子とは異なる酵素に注目し、独自の評価系を構築し、阻害する化合物を探索しています。

現在、UPP(ペプチドグリカンを合成する過程で膜に固定し足場を提供している細菌に特徴的な脂質です)合成酵素を阻害する新しい化合物を発見しており、その詳細な解析をすすめています。